本の風を起こせ!〜図書館総合展

『利用者側に寄る前に、まず本がどうしたがっているかを考えるべきです。』

これは、先日の図書館総合展で「公共図書館の可能性」と題して、TRCのフォーラムで松岡正剛氏が力強く語った言葉である。

この言葉は大学図書館員である私の心に深く刺さった。

OPAC2.0以降、我々図書館員は「利用者志向」に軸足を置いてきた。

「利用者調査」、「FGI(フォーカスグループインタビュー)」、「Google,Yahoo世代の若い利用者を意識したOPAC」等々、少しでも利用者を知り、利用者側に立とうと努力してきた。

今年度になって、ようやく「ファインディング・ツール」,「ディスカバリー」,「My Library」など、利用者ニーズの高いサービスを提供するに至った。

しかし、結果として、いまだコンシェルジュやCRMの領域には達していない。

まだまだ受け身体質なのだ。依然「図書館に来てくれればサービスします」という体質で、全然戦略的ではない。

一方、松岡氏は、これからの公共図書館再建の鍵は、利用者側に歩み寄ることではなく、旧来図書館を支配してきた体質構造を変えることにあると指摘した。それは、図書分類体系をスクラップ&ビルドすることでもある。

そもそも、OPACにおける主題分類は、図書管理上の分類体系であって、利用者にとって探しやすい分類・想像を掻き立てる分類ではない。

あくまで、図書館(員)にとって都合のよい主題分類であり、OPACは業務上必要な検索システムである。

遡れば、最初にできた図書館は「神のための図書館」だった。分類体系も西洋(キリスト教)文化の上に立つ体系だと言える。図書館とは相当な「オーソリティ」だったと推測できる。

つまり、歴史的にみると、図書館とは長い間利用者のためのものではなかったのだ。

だから、図書館の体系や体質をそのままにした状態で、急に利用者のためのものにしようとしても、無理があるのだと思う。

松岡氏曰く、『体系や体質をガラッと変えて初めて利用者側に行ける』と。

これは言うは易しで、そのためには、図書館界および図書館員は相当な覚悟をしなくてはならない。しかし、生き残りのためにはやらなくちゃ!

最後に、松岡氏は、自身の取り組みを紹介した。

『本は群れたがっている』
『本は論争したがっている』
『本は重なりたがっている』
『本はつながりたがっている』

・・・そう、人は一人で生きられないのと同様、『情報は一人ではいられない』のだ。

だから、「本好きな人を集めて、本について語らい、本の風を起こす!」と。

青山スパイラルホールで開催される「連塾ブックパーティスパイラル」がそれだ。

実は、第一巻はつい先日開催されたばかりだが、私はこれに参加してきた。

私も、図書館界に僅かでも風を起こせればと思っている。