鬼になれない上司

課長以上の意志決定者は、時に鬼(悪者、嫌われ者)になる必要がある。

特に、新しい試みや大きな方針変更を打ち出して現場を説得するときは、必ず現場から反対が出るので、それに打ち勝つべく、強い意志や信念を貫く必要がある。ブレていては前に進まない。つまり、自ら嫌な役回りを買って出ないとプロジェクトは成立しない。逃げてはいけないのだ。

それなのに、うちの上司は、ごちゃごちゃ言うだけで、決して自分は悪者になろうとしない。責任を取ろうとしない。結局は更に上の上司のせいにして逃げているのだ。もちろん、予算が獲得できない以上前に進めないという理屈もわかるが、私はお金の問題ではないと思っている。「目標や夢を実現するためにそのプロジェクトを推進するんだ」という強い思いがなければ、実現はしない。”やらされ感”だけではモチベーションは生まれないし、メンバーにもその気持ちは伝染してしまう。要求仕様を策定したり、現場に早く下ろしてシステムのテスト検証を進めて問題点を洗い出すとか、お金の問題とは別にできることはたくさんあるのだ。そういう手間の掛かる泥臭い作業をおろそかにして、形ばかりを先行しようとするから論理矛盾や軋みが出てくる。

このままだとこのプロジェクトは破綻の道しかない。「このままだと目標が達成できません。私が代わりに鬼になりますから権限委譲をしてください」と申し出たが、「そんなことはできる訳ないだろ」と吐き捨てられた。いかにも”俺のメンツを潰す気か”的な態度だった。私は一気にやる気を失った。「では、もうどうなっても知りません。私はこれ以上このプロジェクトに関わって行く気はありません」と強く言い放ってしまった。衝動的というより覚悟の上だった。

すると、今度は態度が軟化して「君がやる気の出ないプランでは意味がない。方針を変更してプランを練り直して見るよ」となった。結局、強く出られると弱いタイプの課長なのだ。人の顔色を見ながら仕事をするなんて、何ともイヤラシイ上司だなと思ったが、ともかく舵が大きく切られることとなった。

しかし、鬼になってくれた訳ではないので、いつ何時逃げ出すかわからない。逃がさないようにガードをしっかりと固めて行きたい。ヤレヤレ・・・。