OPACの行方

今年度、これまでいくつかの全文検索エンジン(有償)の検証&評価を行ってきたが、果たして、図書館利用者が、本当に、蔵書目録の検索に汎用的な全文検索エンジンを好んで利用するのかどうか不安になっている。

つまり、今までのように、ノイズが少なく統制された索引語によって検索する「OPAC(Online Public Access Catalog)」を捨てて(捨てなくともよいが)、Googleライクな全文検索へ行くか?

確かに、ノイズも多いが、たくさんヒットして、特殊なロジックを用いて有用なものから表示(ランキング)され、そこから絞り込んでいけるしくみ(ファセット)があったり、スペルミスを指摘(「もしかして」機能)してくれたりする方が、Google/Yahoo!世代の利用者にとっては受容されやすいかも知れない。

Googleは、いわば「検索結果にノイズがあっても、ランキングやファセットなど表示順でカバーしている」のだ。

その点、FAST(マイクロソフトに買収された)は「様々なクエリを投げて、それぞれの結果を集計して、一気に結果を表示するしくみ」である。スピードは速いし、インデックスも多種多様に切れる。

北米の大学図書館などの分析によると、OPACにやってくる利用者の約8割は、Googleなどの検索エンジン経由であることが指摘されている。

だから「OPAC自体を全文検索にしてしまえ」というのは少し乱暴だろう。

OPACは、本来「セマンティックなもの」だと思っている。検索は1ボックスでもよいが、インデックスやロジックは正規化されたものであり、一覧性の高いソーティングであるべきだとも思う。インデックスも、「nGram」ではなく「形態素」がいいようにも思う。

そして、図書館員の経験とノウハウを結集した「セマンティック・フィルター(ある意味、フォークソノミー)」を噛ませれば、ノイズのない洗練された情報が瞬時に取り出せることになる。

結論的には、トライアル期間を設けて「従来のOPAC」と「新しい全文検索」の2つ用意し、利用者に選択させたらよいと思う。

Web2.0的にするなら、利用者に参加してもらってタグ付けをしたり、検索履歴を利用して辞書を生成したり、検索補助機能に転用してもよい。

そして、どっちが好きか?どうして好きか?など使用感と満足度やコメントを入れてもらい、最終的にどっちを採用するかは図書館が決める。

今までの「利用者に提供するOPAC」という概念から脱却して、これからは「利用者と共に作るOPAC」とした方がカジュアルで良いものができそうな気がする。

これによって、ロングテールをどこまでカバーできるかはわからないが、少なくとも、利用者に軸足を向けたスタンスであることは十分伝わるのではなかろうか?

しかし、決して利用者に迎合するわけではない。「利用者と共に成長する図書館」を宣言するのだ。

これが、先日の「理想の図書館」へとつながっていけると幸いである。