熱海の温泉旅館に見るリカバリー・サービス(障害回復力)

一泊二日で熱海旅行に行ってきた。

コンセプトは「家族で楽しめる客室露天風呂」。子供(双子)がまだ小さいので、大浴場前への移動は正直しんどい。たった一泊だけだし、久しぶりの旅行なので、思い切り贅沢しよう。というスローガンの元に、ちょっと奮発して、評判が良い老舗の旅館を選定した。

14:30チェックインのところを、1時間近く早く着いて、旅館の方々を急かすようにチェックインし、荷物を置くや否や意気揚々と客室露天風呂に向かった。とにかく、1回でも多く客室露天に入りたいという気持ちで一杯だったからだ。ところが、ここで事件が発生した。

なんと、風呂に手を入れたら火傷しそうに熱かったのだ!!おそらく、最低でも50℃はあったに違いない。既に、裸になっていたので、水で冷やすことにしたのだが、熱湯が循環しているため、いつまで経っても風呂の温度は下がらない。20分ほど汗だくになって格闘した所で断念し、フロントに連絡。この時点では、まだ冷静だった。

係の人が到着し、少し作業を進めたところで、「とり急ぎ、41℃まで何とか下がったのですが、このままだとまた熱くなってしまう可能性があるため、一旦お湯を抜いて入れ直したい。作業時間は約1時間です。」との説明があった。残念だったが、この段階でも「まあ、よくあることかな。旅にハプニングは付きものだし。」と自分を言い聞かせて待つことにした。

ところが、そこから1時間、1時間半、2時間と過ぎ、17時になろうとしていた。もう「我慢の限界」となり、ビーチに下りることにした。係の人に「何時間待てばいいんですか。時間がもったいないので、先にビーチに行ってきます!」と言い放って、部屋から出ようとしたら、女将と仲居さんがアイスクリームを持ってお詫びに来ていた。「大変申し訳ありません。不慣れな係の者が設定を間違えてしまったようで、お待たせしてしまいました。もう少しで準備が整いますので、もしよろしければ、それまでの間、冷たい物でも召し上がってお待ちいただけますでしょうか。」

私はついにキレてしまった。その説明を聞き終わるか終わらないうちに、「いい訳は聞きたくないです。なぜ途中で説明が無いんですか。都合の悪いことはすぐに伝える。そんなこと常識でしょう。私たちは、高いお金を払ってでも、何より客室露天風呂を楽しみに来ているんです。それがまともにサービスできないのなら、帰ります。」と言い放って、強引に部屋を出ようとしたら、女将が娘を抱っこして「さあ、ビーチまで行きましょう」と先に行ってしまった。さすがに、子供たちもいたので、これ以上騒ぐのは止めにして、仕方なくビーチまで下りることにした。お詫びの印の1つ目として、送迎バスを出してくれた。

それ以降も、「お詫びの印」として、アイスクリームやらジュース、フルーツ盛り合わせ、子供用のアメニティグッズ(しかもアンパンマンもの)など、細かいフォローサービスが次々と続いた。子供たちは大喜びだったが、私は、サービスとしての不満が残ってしまった。

私の不満ポイントを整理すると、

  • お客を予定時間より待たせる
  • 経過報告がまったくない
  • 不慣れな担当者に任せっきり
  • 遅れの原因を明確にせず、場当たり的な対応をする

といったところか。

私は、「当たり前のことが当たり前にできない」のが一番嫌いだ。難しいことや魅力的なことができないのは、個人差や能力の問題なので、まだ仕方がないと思えるが、誰にでもできる簡単なことやサービスの本質に関わることができないのは、非常に腹立たしい。怠慢としか思えない。

ともかく、その件はその件として、一泊させていただいた。部屋は広くてくつろげたし、料理は量・質とも申し分なくとてもおいしかった。それに、仲居さんは足を運ぶ旅にお詫びの言葉を何度も掛けてくれた。それだけに、今回の件は残念だった。

それと、最後にチェックアウトの際に、女将や支配人などが顔を見せてくれなかったことも、悔やまれる。「これがリッツ・カールトンだったらどのようなリカバリー・サービス(障害回復力)があったことだろう」と何度も思い浮かべた。「終わりよければ全て良し」を痛感した旅でもあった。