「整理術」と「編集術」

佐藤可士和さんに興味があって、今2冊の本を同時並行的に読んでいる。

1冊は「SAMURAI佐藤可士和のつくり方」。もう1冊は「佐藤可士和の超整理術」。
前者は、マネージャーでもある奥さんの佐藤悦子さんが書いたもの。後者は、佐藤可士和さん本人の著書だ。

どちらもまだ途中だが「冷静と情熱の間」を思い出す。つまり、男性側の目線と女性側の目線でそれぞれ仕事に対する姿勢や思いを描いている。もちろん、書かれている内容は異なるのだが、”佐藤可士和の能力を最大限に引き出すための環境づくり”という点ではどちらも共通している。

奥さんの悦子さんは、アートディレクター佐藤可士和のやりたいことや考えていることを十分に把握した上で、クライアントとの契約交渉やスケジュール管理などのマネージメントを担当することで、可士和を雑務から解放し、デザインやディレクションに集中できるように工夫している。

一方、可士和も”超整理術”を駆使して、思考の整理→情報の整理→空間の整理を行うことで、クライアントの問題の本質を見極めて、課題をクリアしている。つまり、アートディレクターとは、単なる自己表現ではなく、相手の思いを整理することから始まる、とのこと。

私が、佐藤可士和の名前を目にしたのは、ステップワゴンでもSMAP缶でもDocomoでもなく、明治学院大学ブランディングのニュースからである。アートディレクターが大学のブランディングを手掛けるとは斬新であった。美大や芸大ならわかるが、一般の大学である。

明学のサイトの佐藤可士和氏インタビューにも書かれているが、大学も少子化全入時代を迎えて、かなり危機感を持ってきたという証拠だろう。

教育機関は、企業と違って危機意識があまりないことが大きな違いですね。今まで必要がなかったかもしれないけれど、少子化や学校の数も増え、選ぶ時代から選ばれる時代になってきています。企業も商品を出せば売れるという時代ではないことに早々に気付いて、それこそ生活がかかっていますから広告・イメージ戦略に懸命に取り組んでいます。教育機関では、何となく心配はしていても、それだけ。
そんな中で、明学のこのプロジェクトは、革新的な動きといってよいと思います。

佐藤可士和の超整理術」の中で、整理術は「快適に生きるための方法論」であり、デザインは「クリエイティビティあふれる整理術」であると書かれてある。この辺りは以前のBLOG(2007-08-28 編集における”門前指南”)でも書いた「編集術」に相通ずるものがある。

「編集術」はとても普遍的な方法で、仕事にかかわる企画力や交渉力から、それぞれの生き方に関係する創造力に至るまで、大きな成果に結実する、と言われている。

今まさに「整理術」や「編集術」を身に付けるべき時代なのだ。少なくとも、今の私には必需品となりそうだ。