国会図書館(NDL)セミナー参加

今日は午後からみぞれ混じりの雪が降る中、久々に国会図書館(永田町)へ行った。以下のセミナーに参加するためだった。外は寒かったが、中は大変熱かった。

★講演とディスカッション「ウェブアーカイビングの現在と展望−国際連携に向けて−」

有用なデジタル情報が大量に、急速に流通するなか、その長期保存の難しさ、失われやすさが問題となっています。この講演とディスカッションでは、ウェブアーカイブを中心とするデジタルアーカイブ全般について、その意義と必要性、最新の国際動向などについて、国際的活動を繰り広げる方々をお招きし、語っていただきます。

ゲストスピーカーは、以下の3氏だった。
○ジュリアン・マサネス氏(ヨーロピアアーカイブ ディレクター)
クリス・カーペンター氏(インターネットアーカイブ ウェブグループ ディレクター)
喜連川 優 氏(東京大学 生産技術研究所 教授)

ジュリアン氏とクリス氏は、いずれもNPO非営利団体)でウェブサイトのデジタル保存・提供や映像・録音などのデジタル化・提供などを行っている団体のディレクターである。NPOと聞いて、なぜNPOがこんな巨大な構想を描き、膨大な情報を取り扱えるのかが不思議だったが、説明を聞いて、役割がよく分かった。

大きなプロジェクトを行う場合、いきなり国が動こうとすると、時間がかかるため、まずは小さく動いて、可視化して、外部への働きかけを行って、その価値を共有し、大きく育てていく必要がある。つまり、小さな風を起こして、竜巻のようにどんどん巻き込んでいく形だ。そして、そのような草の根のボトムアップ活動が、やがて政府や国の機関を動かし、今度はトップダウンで法整備が行われ、「情報大航海プロジェクト」のような形で動き始めるのだ。

ウェブの情報は、天気と同じでいつ変わるか(いつなくなるか)わからない。ウェブ情報の平均寿命は44〜75日。ブログ、コメント、口コミレビュー、2チャンネルなどの中には、ゴミやノイズも多いかもしれないが、それも含めて文化や社会を反映する大切な要素なのだから、分析のためにも保管する必要がある。それを国の政策として取り組むのか、民間やNPOなどに任せておけばよいのか???

クローリング(ウェブ情報収集)などのテクノロジーは益々高度化し、ブラックボックス化され、ASPやSAASと呼ばれる形態でサービスが提供されて来るだろう。

収集した膨大な情報を格納するストレージについても、各機関や大学毎に持つ必要はなく、情報をシェアできればよい。もちろん、各機関・大学のオリジナル情報に関しては最低限アーカイブして、それをRSSで配信するなり、OAI−PMHというプロトコルで、外部からハーベストできる形にしておけばよい。

コンテンツの国際流通のためには包括的取り組みが必要で、「アーカイブの意義と価値の認識と働きかけ」「世界規模のクロールを行うためのテクノロジー」「パートナー探し」「法規制や許諾管理」「標準化」など、さまざまなハードルはあるが、”小さいことから初めて大きく育てていくしかない”かなと。

また、このような活動は”エコ”でなくてはならない。カリフォルニアのデータリポジトリーセンターでは、安くて低電力消費のマシンを数多く採用し、ハードウェアのマイグレーションを繰り返している。

日本国内で必ず引っ掛かる著作権の問題は、国ごとに法規制があり、温度差もある。日本は厳しいので、国(法律)として取り組みを行わない限り、前へ進めない。だからこそ、納本制度のある国立国会図書館(NDL)や国立情報学研究所(NII)、国立大学などが行う意義がそこにあるのだ。但し、そこに民間(特にベンチャー)企業やNPOなど自由に動ける組織の力が必要となる。いわば、取っ掛かりはNPOベンチャー、継続的取り組みは政府機関や大企業、といった構図になろうか。

ウェブ情報を収集する際に、バルク的に収集するものありかと思うが、ターゲットを絞って選択的に収集するなどのアプローチも面白いかもしれないと感じた。いずれにせよ、収集する際には「情報の発行元と連携する必要性」があることを強調されていた。これは、収集に関して規制がかかるかも知れないためである。そのためには、発行元にも収集・保存・提供する価値や社会貢献およびエコなどのアーカイブの意義を十分に伝えて、共感を得ておく必要があるだろう。

プレゼン資料にあった「Don’t wait to get started!(待っていられない。いますぐ始めよう!」という文字が頭と心に残っている。

それにしても、喜連川先生の話は面白い。特に、データマイニングの研究で、ブログなどのウェブ情報をクロールして、関心テーマやキーワードをマッピングして、150インチのディスプレイに映して、リアルタイムに「何が今流行っているのか」などを観察したり、「生協の白石さん」などの大ヒットブログのルーツを調べるのは面白かった。

近い将来、家庭にもこのような大型ディスプレイが普及すると、ウェブ検索やページランクの在り方が変わるのではないだろうか???と考えると、今からワクワクする。Googleを倒す秘策はそんなところにあるのかも知れない。

頑張れ、国会図書館!!

以上、若干長文となりました。ここまで読んでくれてありがとう!!