『氷の華』読了

久々に長編サスペンスを読んだ。

タイトルは『氷の華』、著者は『天野節子』さん。

著者のデビュー作だという。

しかも、定年退職してから書き始め、還暦間近に完成した。

本を書くことは、天野さんの長年の夢だったと言う。夢を叶えるために、調査を行い、裏を取って、何度も構想を練って、ブラッシュアップしたとのこと。まさに「物語編集力」だ。

当初(2006年)は自費出版をして、好評だったため、2007年に公版にグレードアップした作品だ。

結婚12年の隆之と恭子は、誰もが羨む夫婦生活を送っていた。ある日、恭子のもとにかかってきた夫の愛人と名乗る女からの電話。そこで告げられた事実が、彼女を殺人へと駆り立てる。罠が罠を呼ぶ、本格ミステリー。

この本を読むきっかけとなったのは、9/6(土)−7(日)に二夜連続で放映されたドラマだった。

主演の米倉涼子さんのファンということもあるが、やっぱりストーリー設定かな。

米倉さん演じる「恭子」の美しくも無表情でプライドが高く、底知れぬ恐ろしさを秘めているところに引き込まれた。単なる悪女では済まされない。

動揺を隠せず、本当は弱いところもあるのだが、他人には微塵も感じさせない。

ある1本の電話に女性のプライドをズタズタにされ、カッとなって相手を殺してしまうが、その相手は電話を掛けてきた人物ではなかった。

すべて夫と愛人の策謀(罠)だった。それを察知し、鋭い洞察力と、頭の回転の速さで追ってくる警察をかわして行く気丈な恭子はけなげでさえある。

人は、ここまで強くなれるものだろうか?

改めて、女の執念と怖さを感じることとなった。特に「一途さ」は男には絶対勝てないのでは、と思ってしまった。

そして、以前どこかで聞いた言葉を思い出した。

「男は他人のためにも死ねるが、女は自分のためにしか死なない」

原作とドラマでは若干ストーリーは異なるが、TVで先に見ている分、すぐにイメージが湧いたので、スラスラと読み進めることができた。

特に、ラストシーンは異なる(ある意味真逆)のだが、どちらも不気味さや女の意地が見え隠れする。

そこを汲み取って、ドラマ用にアレンジ編集した脚本家はスゴい。

圧巻の500ページ。

気になった方は、ご一読を!