真のリーダーは「他力型」

数ヶ月ぶりに職場で定期購読している「日経SYSTEMS」を読んだ。

その中に「現場で使える実践的部下育成術」という連載記事があり、今回11月号は第2回で「リーダーシップ」に関する記事が書かれていた。

著者は教育コンサルタントシステムアナリスト芦屋広太さんだ。

(著者プロフィール)
芦屋広太氏はシステムアナリスト/IT教育コンサルタント。SE,PM,システムアナリストとしてシステム開発・システム統合などを経験。この過程で調査・分析した内容を「ヒューマンスキル教育」としてモデル化。現場での教育,雑誌・書籍の発表,セミナー・研修に利用する。著書にITproでの連載をまとめた「ITエンジニアのための仕事を速くする7の基礎力と9のエクササイズ」(日経BP社),「「たった一行」で思いどおりに仕事を動かすメールの書き方・返し方(インプレスジャパン),「仕事を成功させる[芦屋式]コミュニケーション5つの技術」(ソーテック),「IT教育コンサルタントが教える 仕事がうまくいくコミュニケーションの技術」(PHP研究所),「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社),「Dr芦屋のSE診断クリニック」(翔泳社),「話し過ぎない技術(毎日コミュニケーションズ)」などがある。

芦屋さんによると、リーダには、自分でやらないと気がすまない「自立型」と、メンバーの力を借りる「他力型」の2種類があり、世の中には圧倒的に自立型のリーダーが多く、優秀なエンジニアほど自立型になってしまう傾向にあるようだ。

そして、「自立型リーダーは真のリーダではない」ときっぱりと言い切っている。

自立型リーダーとは、

  1. 自分でやらないと気がすまない
  2. 自分の知っている範囲しか責任を持たない
  3. 自分の知らないことには関心が低い

対する、他力型リーダーとは、

  1. メンバーにうまく作業を分担し、自分はコントロールに徹する
  2. 目的を達成するためのすべての範囲に責任を持つ
  3. 自分の知らないことにも責任を持ち、他人の意見を尊重したり勉強したりする

この定義に照らして考えると、私は明らかに典型的な「自立型リーダー」である。

ともかく「自分でやらないと気がすまない」のは間違いない。

しかし、「自分の知っている範囲しか責任を持たない」と「自分の知らないことには関心が低い」は違う。

「メンバーにうまく作業を分担し、自分はコントロールに徹する」は×だ。

そして、「目的を達成するためのすべての範囲に責任を持つ」と「自分の知らないことにも責任を持ち、他人の意見を尊重したり勉強したりする」は○だと信じている。

そもそも、私は昔から「プレーイングマネージャー」を目指してきた。

日々技術を磨きながら、それを部下に示し、マネージメントすることが格好いいと思ってきた。

しかし、それでは自己満足であり、部下を押さえ込んでいるに過ぎない。

小さなプロジェクトであれば自立型リーダーでも何とかなるが、大きなプロジェクトになれば通用しない。

そして、最も強く印象に残った言葉がある。

他人のことを、自分と能力を争う人間と思ってはいけません。自分の仕事を助けてくれるパートナーと思うことです。そういう意識になれば、他人に素直に協力を依頼し、協力を得られた場合は、心から御礼を言えるようになります

今の自分には、この意識が最も欠如しているのだ。

これまで、部下は”自分の存在を脅かす存在”であり、”自分の仕事を奪い自分に取って代わる存在”だと考えていた。

だから、部下には必要以上には説明しないし、「育てる」という意識も低い。

これでは、部下が付いてくる訳がない。

この状況を打破しない限り、自分の成長はない。

ましてや、起業などはできない(社長1人の会社なら別だが)。



最後に、他力型リーダーになるための6項目が示された。

  1. 「すべての範囲に責任を持つ」ように考える
  2. 他人の力を借りる
  3. 十分に準備し、戦略や戦術を考えて実行する
  4. トレースをこまめに行い、問題を早期に発見して対応する
  5. チーム・メンバーや上司とのコミュニケーションを密にする
  6. メンバーを育成する

そして、芦屋さんは、他力型リーダーになるには「時間がかかり、根気がいる」と締めくくっているが、まさにその通りだと思う。

リーダーは一日にして成らず。

リーダーへの道は、自分の夢への登竜門でもあるのだから、決して逃げてはならない。

明日から、部下や同僚を、ライバルではなく、”自分の仕事を助けてくれるパートナー”と強く意識するところから始めよう。