『奇跡のリンゴ』に見る安泰で温かい情景

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

家族4人で伊勢山皇大神宮に初詣に行ったら、心なしか参拝客が多かったように感じた。

どの神社でも「不況の翌年は参拝客が多い」と聞くが、そのせいだろうか?

帰りにおみくじを引いたところ、私だけ「大吉」だった。

結果について、さして嬉しくはないのだが、そこに書かれていたことがタイムリーな内容だった。

「あなたが人の上に立つ立場なら、目下の人の気持ちや考え方などをよく汲み取って気を配るので、よいムードでやっていけます。従う立場なら、目上の人の希望する”安泰で温かい情景を生み出す”ことができます。小さく見える出来事にも注意を払う細心さが望まれます。」

うーむ。大晦日のサーバ作業でようやく上司&部下との温かいコミュニケーションを感じたばかりだったので、心に刺さる内容だった。

上司にも部下にも信頼される存在になるって難しいけど、ステキなことなんだな。

まさに、課長や課長代理・係主任といった中間管理職の理想形だ。

それにしても、『目上の人の希望する”安泰で温かい情景を生み出す”』とは、何とも趣のあるフレーズだ。

これを実現するためには、泥臭く、血の滲むような努力を要する。

「どんな些細な変化をも察知し適切な助言をする力」や「相手の気持ちを感じ取る力」が要求される。



”相手を感じること”に全精力を費やしている編集者といえば、幻冬舎の社長『見城徹』さんである。

彼の信条は『圧倒的努力は岩をも通す!』である。

最近いろいろな場面で、『見城徹』の名を見聞きすることが多い。

私は『編集者という病い』という著書で知ったのだが、その後、MakeIt21のビジネスセミナーのゲストとしても登場したり、昨年末に出版された著書『異端者の快楽』も購入して今読んでいる最中である。

石原慎太郎ユーミン郷ひろみ、などとの出版秘話にも驚いたが、何と言っても、私の永遠のアイドル「尾崎豊」との出会いには言い知れぬ感動を覚えた。

晩年、苦悩する尾崎を影で支えた人物だったと知って、さらに身近に感じてきた。

ヒット作の裏側には必ずこの人あり、といった具合に、「これはイケる」と感じたら喰らい付く。そして、捉(捕)えたらテコでも離さない。さらには、必ず売れるのだ。

これは、まさに第六感もしくは動物的嗅覚としか言いようがない。

見城氏は自分のハートに響くタレントを追いかける。アルバムを全て聴き、全てのコンサートに行き、ラブレターを送り続ける。

もちろん、ありきたりな良いことばかりでなく、悪い部分も書く。歯に衣着せぬアドバイスやエールを送り続ける。

そこまでされると、タレントたちは一度会ってみようということになる。

その一度に見城氏は全てを掛ける。二度目はない、一度が勝負だ、と。

伸び悩んだり、スランプに陥っていたり、現実にもがき苦しんでいるタレントたちは、なおさらにアドバイスを受け入れる。

そして、一流の編集が始まる。

見城氏はこれを「癒着」と呼ぶが、「これぞと決めた相手の懐に入り相手の魂を揺さぶる」ということなのだろう。

”売れるプロセス”はとても地道で泥臭いものなのである。

”編集者魂”といった方がしっくりくる。



見城氏は、今日もTV番組「宇宙で一番逢いたい人」に依頼者として出ていた。

見城氏が、宇宙で一番逢いたい人とは、『木村秋則』さん。

奇跡のリンゴ〜「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』の主人公である。

私は、まだ読んでいないが、農薬を一切使わずに独自の自然栽培方式でリンゴの生産に成功した人の成功までの壮絶なストーリーらしい。

2006年に「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介され、そこで紹介しきれなかったため、番組のナビゲーターである茂木健一郎氏が本にしようと持ちかけて、見城氏の幻冬舎から出版されたそうだ。

見城氏は、そんな木村さんを雪の降る津軽まで逢いに行ったのだ。

木村さんは、とにかくよく笑う人で、その笑顔からはそれまでの苦労など微塵も感じさせない。

そして、雪に蔽われた木に生っているリンゴはサクランボのように赤くて、ルビーのように赤く輝いて見えた。

雪の降る険しい自然の中でたわわに実るリンゴの風景は、私にとっては”安泰で温かい情景”だった。

見城氏が一度食べて見たかったというリンゴは本当に美味そうだった。

まさに、木村さんの苦労の結晶だ。

ちなみに、木村さんのリンゴは、ジュースも含めて高級レストランや政治家などに買い占められているらしく、なかなか手に入らないらしい。

木村さんは「圧倒的努力で不可能を可能にした人」。

これ以上に見城氏の琴線に触れるコトはない。

繰り返すが、「圧倒的努力で不可能を可能にすること」。

私の今年の目標が決まった気がした。

「騙されたと思って読んで欲しい」と、見城氏は言った。

さっそく、私がAmazonで『奇跡のリンゴ』を注文したのは言うまでもない。