図書館員の専門性に思う

いま大学図書館界(いや、図書館界全体か?)は大きなうねりの中にある。

デジタルシフトへの立ち遅れ、MARCフォーマットの独自性、インターネットとの親和性の低さ、GoogleAmazonの台頭、雑誌(電子ジャーナル含む)の価格高騰、海外学術電子出版社の寡占化、国内図書館システムベンダーの先細り、経済不況、少子化、予算削減、などなど図書館を取り巻く環境は暗い話題が多い。

数年前には『図書館不要論』がまことしやかに囁かれた。

そして、そこで働く図書館員は、今何を考え、どのように行動しているのだろうか?

いわゆる司書資格は今や無効化しているし、現場では委託化が加速している。

パブリックサービスでは、閲覧カウンターやILLカウンター業務は委託が当たり前となっている。

テクニカルサービスでも、収書担当や目録担当者(カタロガー)の大半は委託でまかなっている。

そのうち、選書や予算管理などまで委託化されてしまうのではと思えてくる。

そんな中、『レファレンス(参考調査係)』は専任スタッフで固めているケースが多いようだ。

レファレンススタッフは、図書館におけるコンシェルジュであり、「花形の仕事」と言っても過言ではない。

彼ら(彼女ら)は、いわゆる専門職だ。

自分たち自身、最戦前で活躍しているという自負もある。

レファレンスライブラリアンにとって、過去の事例データベース(ナレッジベース)と経験がモノを言うのは間違いないが、最新事情やサブジェクト(主題)に特化した情報も常にインプットしておなかいと、百戦錬磨の教員や貪欲な院生たちと対等に渡り合えない。

そう、今、教員からは「図書館員の専門性」を強く求められているのだ。

せっかく、数年かけて専門的知識を身に着けて、教員といい関係が築けたと思いきや、他のキャンパスに異動してしまったりすると、教員としても「一から出直し感」がある。

いちいち説明するのはメンドクサイし、そんな時間もない。

だから、オーバードクターなど既に高い専門知識を持った学生を図書館員に据えようとする動きもある。

要は、即戦力人材の採用だ。

確かにそれは分かるが、では、図書館には一般職はいらないのか?

私は、システム屋ではあるが、図書館においては、システム屋は専門職と呼ばれない。

どちらかというと(いや間違いなく)一般職なのだ。

特定の主題も持っていないし、現場サービスの経験もない。

司書資格もない。いわば無免許運転だ。

まあ、そんなに卑下することもないのだが、ともかく「非図書館員」とか「業者扱い」に近い待遇ともいえる。

しかし、しかし、専門職だけでは、狭く深い知識や既存サービスの深堀は実現できても、新しいサービスや斬新な発想に裏打ちされたオリジナリティ溢れるサービスは見込めない。

時々、外部の風を吹き込む必要がある。

つまり、図書館以外の発想を積極的に取り入れて、今までやったことのないサービスへと一歩足を踏み込む勇気や気概が必要だと思われる。

そのために自分が今図書館で働いているんだと信じている。

極端に言うと、すべてが図書館業務に直結する必要はないと考えている。

すぐには直結しなくとも、数年後、十数年後にはつながってくる仕事だってある。

学習支援や研究支援サービスなんて、まさに図書館がやるべき仕事だし、大学内の「知財管理(Intellectual Property)」は大学の心臓部的な仕事でもある。

これを図書館がやらずに「COE(Center Of Excellence)」は語れない。

大学の中核に、利用者の懐に、深く入り込むことこそ、重要な図書館活動だと思っている。

大学における図書館の価値を最大化し、よいサービスを生み出し、そこにお金が付いて、さらによい人材やコンテンツを集めてくるといった、好循環スパイラルに入る。

こんなことを話していると、すぐに「それって図書館でやることなの?」とか「誰の許可を得たの?」とか「著作権的にまずいんじゃないの?」と言って、思考停止に陥らせる人が多いが、それこそ逃げであり「楽な選択」と言える。

選択の余地があるのであれば、あえて厳しい道を選ぶべきだ。

それが、プロフェッショナルへの道でもあるし、専門職や一般職といった枠組みを越えた取り組みであり、図書館員の生き残り(勝ち残り)戦略だと信じて止まない。

そして、キャリアデベロップメントを真剣に考えるべきだと思う。

「上司や組織として、その人にどうなってほしいのか?」と「その本人が、自分は図書館でどのように生きて行きたいのか?」の”適性&適正マッチング”を定期的に行って、軌道修正を行ったり、方向転換したりして、キャリアを積み上げていくことが大切だし、ステークホルダーにとってもそれが良い結果を生むような気がする。

言い方は悪いが、知識や経験を深掘りする「専門ばか」と新サービスを生み出す「アイデアばか」とそれを維持管理する「統制ばか」が組み合わさった「プロジェクトベースの体制(上も下もないフラットな体制)」を作っていければ面白いと思う。

なお、「図書館員の専門性」については、ブログや文献が多数書かれているので、Googleなどで検索していただきたい。

参考)「司書は専門職と呼べますか?〜かたつむりは電子図書館の夢をみるか」