パラドックス13

東野圭吾さんの『パラドックス13』を読んだ。

久々に東野ワールドに思い切り引き込まれた。

ボリュームは400ページを越える分厚いハードカバー。

書店で手にとったとき、なかなか手強いな、と感じた。

しかし、読み始めると、マンガを読むように、イメージを膨らませながら一気に読み上げてしまった。

13秒のズレがもたらす悲劇的な世界。

そして、絶望と生への執着が交錯する世界。

死後の世界ではなく、「なかったことにされてしまう」世界に迷い込んだ13人の老若男女。

次々に彼らに襲いかかる事故や事件。

大雨、洪水、雷、地震、地割れ、浸水、倒壊、食糧危機、安楽死、レイプ未遂事件、などなど。

そして、いろいろぶつかり合いながらも、1人のタフで誠実で前向きなカリスマ警察指揮官の下、生き残るために協力していく。

まさに、天変地異のサバイバルワールド。

その世界では、生前の肩書きや立場や価値観なんて何の役にも立たない。

善悪の判断も状況に応じて自分たちで決めて行かなくてはならない。

ブレないタフな精神力と状況に応じて生き残るために優先すべきことを瞬時に判断できる力、そしてメンバーを説得し導く力。

時に判断を誤っても、みんなの意見をちゃんときいて、軌道修正していく。

迎合したり流されたりする訳でなく、自分たちで考え判断を下していく。

自分がこんな状況に陥ったら、パニクってしまって冷静な判断をしたり、死を目の前にして自分より他人を優先に考えられるだろうか?

どう考えてもまず無理だろう。きっと、自分のことだけで精一杯だろうから。

このような状況下では、危機察知能力やイザと言うときの瞬間的判断力、余分なもの一切を捨てる力、といったいわば「サバイバル力」が問われる。

これは、極限状態の開発プロジェクトでも大いに役立つ能力であり、日頃から鍛えておきたい能力である。

一番優先させることは何か?何を捨てて何を拾うか?自分は死んでも、みんなが生き延びることを優先できるか?

そして、終盤は「より戻しの13秒」に命を賭けて飛び込んでいく。

なかなかうまく伝えられないが、この先は原書を読んでいただきたい。

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?
13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13 現象”とは何か。生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。“奇跡”のラストまで1秒も目が離せない、東野圭吾エンターテインメントの最高傑作!
Amazon内容紹介より)