コトバノアトリエ〜MakeIt21

『自分にはやりたいことがなかった。』


『自分にやりたいことがないなら、他人がやりたいことを支援すればいい』と悟った。


『電車で失くした鞄をさがすよりも、他にさがすべきものがあるはず』と感じだ。


と達観したように語るのは、NPOコトバノアトリエ代表の山本繁(やまもと・しげる)さん。


今日のMakeIt21のゲストだった。


そんな発言も、山本さんのプロフィールを見ると、合点がいく。

1978年東京都生まれ。
慶応義塾大学環境情報学部卒業後、NPOコトバノアトリエを設立。
約4年間のボランティア活動を経て、事業型NPO社会的企業)に組織転換。
以後、ニートやひきこもりの若者しか入学できない「神保町小説アカデミー」や、
ニートのためのインターネットラジオ局オールニートニッポン」、
漫画家志望の若者に格安で住居を提供する「トキワ荘プロジェクト」を立ち上げる。
活動を続ける中で「若者たちの社会的弱者への転落を予防できないか」と考え、
09年3月「日本中退予防研究所」を設立。
若者たちが未来に希望を持てる社会の創造に取り組んでいる。
07年2月社会起業家向けビジネスプランコンテスト「STYLE」優秀賞受賞。
著書に『やりたいことがないヤツは社会起業家になれ』(メディアファクトリー)。

ともかく、ネーミングセンスがいい。

真面目な取り組みなのに、「オールニートニッポン」や「日本中退予防研究所」などは思わず笑ってしまった。

社会起業家には、以前より興味を持っているが、社会起業家には志の高い人が多い。

ニートや引きこもりへの救済と同時に、それを予防する方にもフォーカスしているのだ。

結局は、転落への悪循環の根を絶たないとダメということなのだろう。

しかし、NPO法人とはいえ、利益も得られないと成り立たない。

100年に1度の経済不況で需要は高いとは思うが、ビジネスモデルとして成り立つのだろうか?

救済される側、悩める側には、お金を持っている人は多くない。

2007年には、いくつかのコンペを勝ち抜き、「SEEDCap Japan」(社会起業家育成支援プログラム)の助成団体に選ばれ、助成金をゲットした。

「SEEDCap Japan」とは、アメリカのヘッジファンド運用会社の運用益から生じる成功報酬の10%を助成金の原資とし、日本のソーシャル・ベンチャーを支援するプログラム。

活動を続けていく中で、山本さんにとっては想定外の収入も生まれた。

オールニートニッポン」でパーソナリティの雨宮さんの話を収録した本(『雨宮処凛オールニートニッポン祥伝社新書)が出版され、印税収入につながった。

「それでも収入はカツカツです。
 2000万円ほど入ってきても、純利益は500万を切りますから。
 スタッフには給与を払ってますが、二人で一人分くらい。
 これで生活していくのは大変なので、講演やコンサルティングなどの副業もしてます」

しかし、山本さんらスタッフが支援を続けてきたおかげで、ニートは少しずつ自分の力でお金を得られるようになっています。

(東大自主ゼミ☆ダイジェスト版『第28回 ソ−シャルベンチャー?』より引用)

そして、2009年5月1日現在で職員数:3人、事業予算は約3,000万円(2008年度)となっている。

山本さんのスタイルは「興味があれば、やってみる」こと。

やってみると、その体験から開かれてくる道があり、次の夢が見えてくる。

山本さん自身も、そんな具合に試行錯誤を重ねながら活動を続けてきた。

『私はこういう問題を解決します』っていう強烈なミッションを持ってる人もいますが、僕にそうしたものがあるとしたら作品を作ること。両親もクリエイターですから。でも、僕は自分を突き詰めた結果、からっぽなんですよ。だから支援する側に回ろうとしてるのかな。
(『プライドワーク』から一部抜粋)

”自分は空っぽ”といえる強さがいい。

逆に、キャパの広さを感じる。

自分一人でできる領域は限られている。

『会社に雇われなくても収入を得られるビジネスモデルを自分で作った方が、自分自身を誇れる働き方ができるからです。』と言い切り、行動できる強さがすばらしい。

若い社会起業家からは見習うべき点が多い。

しかし、『私にはやりたいことがある。』

だから、まずは自分の力で前に進まないと・・・。

そして、周囲から共感を得て、支援してもらえるような志の高い会社を作りたい。