「bx」の風がようやく吹いてきた

ExLibris, OCLC, EBSCO, Elsevier, Proquest等々、世界の図書館覇権を目論む超大手ベンダーが虎視眈々と、新サービスを構築し展開しようとしている。

薬学図書館 Vol.54 No.3の【プロダクトレビュー】には以下の記事が掲載された。

・PharmaPendium 海附玄龍・鈴木直子(エルゼビア・ジャパン)
・EBSCOhost Integrated Search (EHIS)について  古永誠(EBSCO Publishing)
・Ex Libris社の新サービス"bx"について  西田司(ユサコ)

Ex Libris社の新サービス"bx"とは、ユサコさんからの連絡によると、

bXは、Amazon.co.jpなどに見られるレコメンデーションサービスをリンクリゾルバーに統合したもので、「この論文記事に興味がある人は次の資料にも興味を示しています」というように、関連度の高い他の論文記事を利用者に提示するサービスです。

というものらしい。

詳しくは、図書館退屈男さんの「リンクリゾルバにbXの風が吹く」に譲りたい。

この記事の解説は、bxだけでなく、Ex Libris社の検索インタフェース「Primo」の構造の解説も書かれていて、本当にわかりやすい。

これまで、「論文の評価手法は引用分析など、紙ペースの手法のまま」だった。

「タクソノミー」とでも言おうか。

そこで、レコメンデーションへと向かうことになる。

しかし、単なる人気投票や恣意的なレコメンドとは異なり、完全なフォークソノミー(誰でもが推薦できるもの)ではない。

学術分野に求められているのは「論文」レベルのレコメンド。
「人気」に基づくものではなく、利用状況の分析に立脚したもの。

つまり、ここでいうレコメンデーションとは、「膨大な利用ログを基に、図書館での分析フィルターを通したもの」なのだ。

研究コミュニティの力も借りて、ハイエンドで価値の高いレコメンデーションだと言える。

では、なぜそのようなレコメンデーションが必要なのか?

レコメンデーションを行うと、論文と論文、論文と著者、論文と読者、著者と著者、著者と読者、読者と読者などのつながりが生まれる。

つながりが生まれると、視野や世界が広がっていく。

自分一人では気づかないことに気づくこともできる。

そう、「人も情報も一人ではいられない」のだ。

著者とて、論文を公表した時点で自分だけのものではなくなる。

本や絵画や音楽や映画も同様である。

読み手や受け手が自由に想像し、新たな世界観が作り出される。

マッシュアップ

そこに共感する人が現れたりして、さらに広がる。

もちろん、どれだけ共感を得られるかで、その論文の価値が決まるのだが、単なる「人気投票」ではないのがミソだ。

専門分野の著名人や影響力のある人をどれだけ唸らせられるかなのだ(どの世界も一緒か)。

ここが「インパクトファクター(引用・被引用)」とは大きく異なる点だ。

引用数だけであれば、例えばインドや中国がもし国家施策として「この論文を必ず10回以上引用すること」と命令すれば、それだけでインパクトファクターは上がるが、この場合、本当に引用した人が関心を持ったり共感しているかといえば、そうではないだろう。



『強制からは共感は生まれない』


『共生からしか共感は生まれない』


共生とは、コミュニティであり、つながりである。

今回は、bxの話ばかりに終始してしまったが、EBSCOhost Integrated Search (EHIS)もASP型のクールな統合検索サービスである。

EBSCO hostのデータベースだけではなく、他社データベース、電子ジャーナル、OPACなどを組み込んで統合検索ができるとのこと。

技術面では、AJAXを使って検索ストレスを回避しているようだ。

巨大なデータセンターを配備しているらしい。

最近のEBSCOは「学術情報界のGoogle」を狙っているのではないかと思えるほど、囲い込み戦略に走っている。

日本語対応はまだまだこれからだが、価格次第では、Googleに次ぐ、図書館SaaSの日本侵略も近いのでは?と思ってしまう。

EHISについては、また別の機会に触れたい。