20%ルール

Googleでは、勤務時間の20%を自分の好きなことに使ってよい、という「20%ルール」があるのは有名な話だ。

これは、もちろんGoogle流の人材育成であり先行投資であるが、相当な企業努力だと思う。そして、簡単には真似できないシステムだと思う。「成長企業で大儲けしているからそんな余裕があるのだ」という人もいるかもしれないが、「Googleが成長し続けるためには絶対に必要だ」とトップが判断したからこそ採用されているに違いない。組織構造をフラットにして、自由な発想をどんどん受け入れる土壌を作ることにより、実際に新らしいサービス、新しい価値が生まれている。

要は、社員の”想像力”と”創造力”を信頼しているのだ。

最近、「変わらなきゃ」とか「新しい価値の創造」とか謳う企業も多いと思うが、こういった企業努力がどれだけ実践されているかは疑問である。社員側も「あったらいいけど、無理だよね。うちの会社にそんな余裕ないし...」と諦めているのではないだろうか。

今日、私は、あえてそれを上司にぶつけてみた。「Googleに負けない新しいサービスを生み出すには、Google以上の企業努力が必要です。現状みんな目先の仕事で一杯一杯の状況で、新しいものを考える余力などどこにもありません。私も、勤務時間外を利用して積極的に外に出て行って、外部の人たちとコミュニケーションを図り、新しいアイデアや視点を現場に取り込んでいる状況です。でも、それにも限界があります。例えば、Googleの”20%ルール”のような、個人のイノベーションとモチベーションを促進するための努力を考えるべきではないでしょうか?」と。

それに対する答えはこうだった。「個人的には良くわかるし、それが実現できたらどんないよいかと思う。しかし、現在の人事制度を無視して、うちの職場だけ勝手にそんなことはできないし、今の仕事内容や体制をみれば、どう考えても現実的でないでしょう。」というニュアンスでかわされてしまった。

結局、小手先でやってもダメで、やるなら、人事給与制度そのものを抜本的に変えない限り、そもそも無理なのだ。やはり、態度で示す(実績を作る)しかなさそうだ。悲しいかな、現在の職場では、アイデアでは何も評価されない(アイデア自体の価値は0)。それを具現化して、サービスに落とし込み、提供して良い評価を得る。つまり、良質のアウトプットがないと評価ほされないのだと改めて思い知らされた。

これは、もはや「企業努力」のレベルではなく、「文化の違い」で、その企業の文化の軸足がどこにあるか、何を目指し何を変えようとしているのか、を見抜いた上で提案しなくてはならないのだろう。

道のりは果てしなく遠い。それでも、越えられない「壁」ではないと信じている。

最後に、Google COEのエリック・シュミット氏が5月に来日した際に残した言葉が印象的だったので、書き添えたい。


・「重要なのは、グーグルの文化を維持することです。グーグルの文化とは、ユーザーを最優先し、製品の質と操作性を絶えず向上させることです。」
・「最終的に目指すのは情報集めの検索ではなく、情報の意味を本当に理解できるようなサービスです。」

ユーザーに軸足を向けるのであれば、まず社員を大切にしてほしい。これは、リッツ・カールトンの教えにも書いてあったかと思うが、まさに「一番大切なお客様は従業員である」。この姿勢が、社員のモチベーションを向上させながら、あっと言わせるような新しいユーザーサービス(イノベーション)を生み出す原動力となるのだ。